一度、勤めてた学校辞めてITやってた時、先物取引をやったことがある。その時にやった銘柄は、原油や灯油、石油といったもので、湾岸戦争間近だったこともあり、それなりに市場には動きがあった。特にジェットエンジンの燃料に使われる灯油の上がり下がりの動きが大きく、朝、
「買い1つ入れて」と電話しただけで、市場の閉まる午後3時頃には、3万円以上儲かったこともあった。
 ある日、灯油がそれなりに上がっていく状況だった木曜日、
「あと2つ位買いを入れときませんか?」と担当者から電話があり、
「いやー、まだ分らんし、もう5つも買ってるから…」
「そうですか…」
といったやり取りをした。その日の午後3時前、アメリカの市場の動きも良く分からなかったので、急いで電話して、
「週末やし、心配やから、あと2つ売りを立てて、売りと買いを揃えて!」と担当者に告げた。
「えっ!売りですか。分かりました…」自分に予測が彼とは違ったようで、若干不満げな返答だったが、少しして、無事売りが入った旨の連絡があった。その日、日本の市場が閉まった後のアメリカ市場がすごいことになった。灯油がストップ安!『アメリカがクシャミをすれば、日本は風邪ひく』の例えもあるように、先物市場も例にもれずだった。次の金曜日は、売りは入らず、買いの先物は、値下がりするのを指をくわえて見てるのみの状況だった。次の週もほぼ市場はストップ安。3日目位に、一時売りが入れられる状況になり、またすぐにストップ安。(その『一時』に買いを入れる勇気があった人は儲けてるはず…)結局自分は、市場が落ち着いて、売りと買いが正常にできるようになってから、
「もう、売りも買いも全部整理して、清算して」と担当者に電話した。
 今考えれば、学校で働いている時なら、当然市場の動きは分からないし、ITやってた時も、市場が微妙な動きをしてたら、『仕事どころじゃない!』ということもあった。1つの先物で何十万といった動きも普通にあるし、うまくいってる時は、
「この調子なら、五百万くらいは直ぐやな…」と、自分がちょっと偉くなったような錯覚さえ覚える。ただ、逆にダメな時のストレスは、半端なものじゃない。『ハイリスク、ハイリターン』の典型で、まだ株なら投資した金額がパアになるだけだが、先物はその性質上、マイナスになることも普通にあるのだ。
 実際、あの時売りを入れてなければ、自分は破産してたかも知れないし、先物は『十分な資金のあるもの』が勝てる確率が高いと思う。
 Traderというのは、資本主義社会独特の非生産的な職業だと思うが、確かに、取引の仕組みや銘柄の特性、価格だけではなく、社会情勢等、様々な情報も知った上での判断が必要で、短期でやめるのならともかく、長期間携るつもりなら、片手間にやって儲かるものではなさそうだ。実際、自分が灯油を清算した時に、何十万かの利益はあったが、それを得るのに費やした時間や労力(知識や情報等をgetするために努力した…)を考慮すれば、『ズルくない仕事』だった。少なくとも自分は、先物取引については、二度とやろうとは思わない。

カテゴリー: 随筆

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