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幸せ色のオブジェ

本当は幸せな家庭を作って
君の成長をずっと見守っていたかった

ゆうこ

一番君がかわいい時期に
側で見守ってあげられなくて
静かな時を共有してあげられなくて
本当にごめん

せめて今日だけは
貪るように二人で時を共有して
ぽっかりと抜け落ちてしまっている
あの頃の時間を取り戻そう

幸せな父と娘を演じることで
あの頃の暗く重たい思い出を
幸せ色に塗り替えようとしている

上塗りされた薄っぺらな明色は
長い間沈殿した鉛の固まりを覆い尽くせる訳もなく
いくら塗り重ねても
すぐに剥げ落ちたり
錆びて鈍色に変色したりしてしまう

(本当の色じゃないんだ!)

でも何度も何度も塗り重ねていったら
剥げ落ちた塗装も
さび付いて変色した部分も
分厚い明色の塗装にくるまれて
幸せ色に輝く日が来るかもしれない

僕は信じる

幸せ色だけで塗り重ねたオブジェよりは
重厚な鉛の上に幸せ色の塗装を塗り重ねたオブジェの方が
もっと揺るぎないものになることを

全ての生涯を掛けて
僕は信じる

kimihiro

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kimihiro

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