自分は、そんなに体力に自信がある訳でもないし、一時期、風邪を毎年のようにひいてたこともあるが、記憶の限りでは、インフルエンザにはかかったことがない。
 3,4年前の冬、腹の調子が悪く、だるいので、
(もしかしたらインフル?)と思い、学校に連絡を入れ、近くの病院へ行った。その日は3時間目からの授業だったので、特に何もなければ、検査終了後に学校に行って、授業をするつもりだった。血を採られ、1時間ほどで検査が終わった。
「インフルじゃないです」と担当医。
「じゃ、学校行けますよね。3時間目授業なんで」と尋ねると、
「いや、ちょっと待って下さい…」と言って、奥の方に入って行った。
(インフルエンザじゃなければ、風邪だろうから、マスクでもして行けば、生徒にうつす心配もそんなにない)その日の学校の授業は、その数学の1時間だけで、あとは予備校。予備校は夜の7時からで、物理を2時間教えることになっていた。自分としては、他の教員にできるだけ迷惑をかけたくはなかったし、そんなに気分が悪くもなかったので、学校にも予備校にも行く気満々だった。しかし…。
「森さーん!入って下さい」促されて診療室に入り、イスに座った。
「よろしくお願いします。インフルじゃないんですよね」
「ええ、インフルじゃないですが、ノロウイルスに感染してます」
「えっ!」ドクターが言い淀んでいた意味が、一瞬で把握できた。感染性胃腸炎。
(だから、今朝は下痢気味だったんだ。インフルと昨夜の酒のせいではなかったんだ!)学校ではインフルエンザが猛威をふるい、学級閉鎖に陥ったクラスもあったから、そんなに予防措置を講じてなかった自分は、てっきりインフルエンザにかかってしまったと思い込んでいた。急いで、学校に連絡。
「すみません、インフルじゃなかったんですが、ノロウイルスに感染してるということなんで、『生徒にうつってもいかんので、1週間位は出て行かれん』そうです。数学科によろしくお伝え下さい」学校の教務、次に予備校と、かなりバタバタとさせてしまった。
「じゃあ、あとは点滴を打っておきます」腕を出してベッドに横たわった時には、昼頃になっていた。観念して横たわっていると、カーテンの向こう側から看護師さんの話声が聞こえてきた。
「まだイカンちや。まだノロがおるき…」聞く気も無かったし、声を押し殺した会話ではあったが、カーテン越しに十分聞こえた。昼食のお誘いの電話に応答しているようだった。とはいえ、『もういいです』とか言って、点滴を途中で止めてもらう訳にもいかず、こちらはそのまま液が落ち切るのを待つしかなかった。
 点滴が終わった時に、二人の看護師さんがいて、そのどちらが電話口で話していた方かは分からなかったし、よほど『どうもノロですみませんでした』と嫌味に言ってやろうかとも思ったが、
「ありがとうございました」
「お大事に」という月並みな挨拶を交わし、診察室を出た。
 電話で昼食のお誘いを断るにしても、『点滴してる患者さんが居るき』で良かったんじゃない?

Dec.10 ’18(ノロ)

カテゴリー: 日記

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